米国の医療法案は成立しました。

 オバマ大統領とトランプさんの最初の会合で、これまでオバマさんが営々と努力してきた国民皆保険制度(*)への努力は吹っ飛ぶことが明らかになってから、連邦議会の動きが加速されたような気がします。

(*)通称“オバマケア”と呼ばれ、世界では常識となっている国民皆保険制度を米国でも実現しようと一歩を踏み出したものですが、堤未果さんの「沈みゆく大国アメリカ」(集英社新書,2014)ではその欠陥が厳しく指摘されており、米国の伝統的保守白人層の自己責任主義者(トランプ支持層)からの反対も大変強いものです。

 昨年下院を通過してから一年以上をかけて大幅に再構成された治療法案が、11月30日に下院で承認され、12月6日に上院を通過し、12月13日にオバマさんが署名しました。米国の法律は議会を通った後、大統領が署名して始めて法に成るわけですが、この法律はオバマ大統領の最後の署名となりました。

 それにしてもあまりにも内容が広すぎます。

 医療関係の国の研究費(NIHの予算)を増やす話は先に少し触れましたが子息をガンで失ったバイデン副大統領が推進するがん研究推進計画(キャンサームーンショット(*))も取り込まれ、

(*)その昔アポロ計画で月に人を送り込もうという大計画はアメリカでは“ムーンショット計画”と呼ばれています。それと同じくらい莫大な予算を投じてガンを克服する研究をするぞという バイデンさんの決意からキャンサー・ムーンショットと通称されます。

  またオバマケアのシステムに中小企業が入りやすくする条項も含まれています。その部分が、少しでもオバマケアを推進したいというオバマさんの執念となって、法案の成立に一気に向かったのかなあと推測します。この先トランプさんにどんでん返しを食らう可能性もなくはないようですが。まあ政治の駆け引きのことは分かりませんが。

 そういうわけで本当に盛りだくさんな法でありますが、我々の関心はもちろん医療機器にあります。結論として1年半の紆余曲折を経たけれど、規制緩和に関しては下院を通った原案でそのまま成立したように見えます。医療機器だけに限ってみてもFDAの規制が大きく変わる可能性がありますが、その中でも一番大きな影響が出そうなのは臨床試験です。

 日本では研究のために医者が自ら行うものを臨床研究と呼び、製造承認に必要なデータをとるために企業が医者に頼んで行うものを治験と呼んで、区別をしていますが、米欧ではその区別はなく、全ての臨床試験が厳しいルールと基準の下で行われます。(米欧共通ルール、日本は蔑視または疑問視されている。)

 アメリカで問題となったのは、承認に必要とされる試験の数です。それは大変膨大な数が要求され数億円どころか数十億円の費用の何年もの時間がかかります。日本企業がアメリカでそのような臨床試験をやり遂げられるとは到底思えないくらいのものです。

 21世紀治療法(The 21st century cures act)は、この臨床試験を大幅に緩和することになると思われます。多くのケースで試験は不要となることも予想されます。

 トランプさんが大統領になれば、FDA長官も変わります。現在のネット人事では、あらゆる政府の規制に反対することで有名な人が下馬評トップです。 なんとその人は、業界団体のスピーチで “Letpeople start using them, at their own risk.” と公言してはばからない人なのです。 こんな人が長官になって、FDA審査に必要なデータの大幅削減どころか無用論まで打ち出したら一体どうなるのだろうかと空恐ろしくなります。

 年末で慌ただしいことですが、法案の内容をしっかり勉強しなければなりません。また、アメリカのシステムは、法そのものより行政側がその法に基づきこのように規制しますという連邦規制の方に実効力がありますので、今後FDAから出される規制(FDR Title21)とガイドラインに目が離せません。

 こんな話題ばかりでは退屈ですので、調査成果は別のホルダーに逐次入れて行きますので、年末年始は楽しい話題をお送りできないか努力します。

 お寒いなかご自愛を

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